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スクリーンを横から見てみる

映画と、映画以外の全て、の2つについて。twitterは@cathexis_impish

『薄氷の殺人』裏切りの所信表明

2015年に観た中で『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『はじまりのうた』と並ぶ、気持ちいい体験をさせてくれたのが『薄氷の殺人』です。ベルリンでグランプリ、主演男優賞を受賞しているのに知名度が低くて残念です。

特に、目眩がするような、色気が匂ってくるような映像。氷を滑るヒロインが今でも夢に出てくることがあります。

 

映画のファースト・ショット/ファースト・シーンで面白いと感じた映画に駄作はないと思ってます。

『薄氷の殺人』もそう。グイ・ルンメイの美しさだけで充分傑作ですが、この映画のファースト・ショットは、あなたが視ているもの考えていることを裏切ります、という監督からの所信表明ではないでしょうか。

 

 

安いビニールのようなもので包まれた何かが地面に落ちている。

カメラが振動でブレ始める。何かおかしい。カメラがズーム・アウトすると、そこは地面ではなくトラックの荷台。

 

包まれた何かが人間の手だと分かった直後、男女が部屋でトランプをするシーン。

男女の腕の絡みと切断された腕のカット・バック。男が腕を切断した犯人だと思させるようなモンタージュが続く。しかし男は刑事だったことが分かる。

 

容疑者だと思った兄弟が無実だったと分かり、ふと気を許したあとの緊張。

 

主人公の刑事が撃たれたと思わされた次のショット、病院の建物のロングショット。画面右から車いすに乗った人物がフレーム・イン。刑事は半身不随になったのか、と思いきや、画面真ん中の病院玄関口から歩いて現れる。

 

時間経過のシーンでの、主観だと思ったカメラが客観視点。

 

クリーニング屋の店主は世間に髪型を騙し続ける。

 

夫が殺される直前の、妻の身体に触れるのを我慢する手。グー、チョキ、パー、グー、チョキ、パーと規則正しく動かさない。

 

二人が観ている映画は3D用メガネをかけている。スクリーンが映らないので作品は不明だが、聞こえてくる音から古い映画だと思われる(3D映画ではない)。映画館の外観からも3Dの設備が整っているようなところではない。

 

革のジャケットの持ち主もすぐに思いつくが、本人のものではない。

 

 

気づいたところだけでも、こんなに観客を翻弄する要素がありました。

だから女の自白もきっと嘘に決まってます。

女がラストでとても爽やかな表情を見せるのは主人公の愛情に対してではなく、これでやっと男たちが近寄ってこない場所に行けるという安堵からではないでしょうか。

ラストの花火を上げているのも、我々がすぐに思いつく人物ではないでしょう。きっと物語には関係ない偶然その場で花火を打ち上げてた悪ガキでしょう。

 

最後の最後だけ我々を裏切らない、なんてはずがないですから。

 

 

 映画の公式サイトってすぐに消えちゃうんですね。

 

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