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これからの人へ。飽きずに楽しむための、なるべくストーリーに触れないガイド 「前回までの『ツイン・ピークス』」

ツイン・ピークス The Return』
なんとびっくり新シーズン放送開始のニュース。
日本でも2017年7月よりWOWOWにて放送。
25年後のツイン・ピークスが舞台で、旧シーズンの俳優もそのままの役で多数登場するとのこと。個人的にはダブルRダイナー常連客のデブが登場するのかが気になっています。
なお、リチャード・リンクレイターはかかわってないようです。

押入れの奥にしまっておいた「ツイン・ピークス」のDVD BOXを引っ張り出して見直しましたが、変わらず面白い。今見ても色褪せていないのは、極端な異端児で唯一無二の存在だから、もしくは町の人口が25年前から変わってないからでしょう。
でもあまりにもクセが強いため、見始めても「意味が分からない」「ついていけない」「おなかいっぱい。飽きた」と途中で辞めてしまった人も私の周りには多数いました。
恐らく見方が間違っているのでしょう。
旧作は未見だけど新作放送のニュースを知って、ちょっと興味を持った方へ、または一度挫折したけど、もう一度観てみようかしら、と思っているあなたへ案内します。
ツイン・ピークス』に心が乗っ取られる人が少しでも増えてもらえれば幸いです。

 



1.ローラ・パーマー殺人事件の犯人を見つけるドラマではない

このドラマは、ツイン・ピークスというアメリカの地図でいう左上、カナダとの国境に位置する架空の田舎町に住む人たちの、支離滅裂、荒唐無稽、阿鼻叫喚、誨淫誨盗(かいいんかいとう)な要素が所せましと暴れまわる、ごった煮エピソードの集合体です。


作品のあらすじで描かれるストーリー(ローラ・パーマーって少女が殺されて町が騒然としているときにFBIのクーパーって人がやってきて犯人を捜す)や、映画版のサブタイトルになっていることから「誰がローラ・パーマーを殺したのか?」が『ツイン・ピークス』の全てだと思われてる人は多いと思います。
メインプロットであることは間違いないのですが、犯人当てミステリーだけではないのです。
実際、犯人当てエピソードは全体の半分程度で終焉します。前半部分だけです。後半はレクター博士もどきがメインプロットとして町をお騒がせします。
そのふたつのプロットにまとわりつくように、ツイン・ピークスの住人が表には出すことが出来ないあんなことやこんなこと、主に背徳感に満ち満ちたエピソードが描かれます。それらのエピソードではみんな悪い顔をしてるので「こいつが犯人なのではないか?」とメインプロットに絡んでくる気がするのです。
住人たちのエピソードを殺人事件と等価に扱ってあげてください。「こんな話、事件と関係ないじゃん!」なんて言わずに。
そうすれば楽しめるはずです。

 

 


2.動機(のようなもの)

タイトルにあるように、なるべくストーリーには触れません。しかしローラ・パーマー殺人事件の犯人について、具体的な名前は伏せますがギリギリまで近づこうと思います。なぜかというと、動機(のようなもの)が理解できずに放りだしてしまう人が多いからです。動機(のようなもの)について知ったうえでのほうがドラマを楽しめると私は思っていますが、知りたくない方は次のトピックまで進んでください。続きを読まれる方はスクロールさせてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



ローラ・パーマー殺しは実在する人による犯行ではありません。
人の恐怖や不安といった感情に寄生する超常現象のようなものが犯人です。
例えるなら黒沢清監督『キュア』のようなものでしょうか。

そして超常現象は「悪」そのものとして、理由なき悪行の限りを尽くします。
なぜ理由なき邪悪な存在なのか、そのあたりは町山智弘さんの『ダークナイト』におけるジョーカーの解説が分かりやすいと思います。ここにあるミルトンの『失楽園』に出てくるサタンのような存在ではないかと思っています。

https://www.youtube.com/watch?v=iB6JaCQG6FY



実在する登場人物が実行犯なのですが、その「悪」が憑りつきローラを殺します。「悪」が主犯です。
そしてこの「悪」が、ドラマでは人の形で登場するので混乱してしまうようです。
「あいつは誰?」ってなります。
あいつは邪悪な存在です。人の形をした悪魔です。
そこを踏まえて鑑賞すれば混乱はしないと思います。

実行犯は死にますが、超常現象は死にません。恐怖を抱える別の住人に寄生して生き続けます…。

 

 

 

 

3.町には美女がツインどころか何人もいる

 

面食いで有名なデイヴィッド・リンチですから、もちろん美女がうじゃうじゃ出てきます。もうミスコンが開催できるんじゃないかってくらいです。
男性はきっと好みの女性が見つかるでしょう。あなたは誰に投票しますか?CDに握手券はついてませんが、このドラマのサントラはお勧めなので購入しても損はしません。
あと、おじいちゃんもたくさん登場します。
個人的には前半がオードリー、後半はシェリーです。次点はモルダー捜査官。
とはいえ、オードリーはまだ17、8の小娘。駅乃みちかの大人の色香には敵いません。シェリーは確かに佳人。しかし薄幸。美しい女性というのは幸運な人を指すもの。西洋画の女神のようなフォルムと、自信あふれるみちかの表情は幸運の天使に囲まれているかのよう。
やはりみちかの圧勝です。
みちか、元の姿に戻ってくれてありがとう。

 

 

 

matome.naver.jp

 

 

 

 

4.ミステリアス、かつエロティック


デヴィッド・リンチの世界観といいますか、あの得も言われぬ独特の雰囲気。
雰囲気づくりの天才リンチですが、エロティックな雰囲気づくりでも他の追従を許しません。登場人物たちはいつも接吻ばかりしていますが、決して裸体は晒しません。売春宿も出てくるのに。テレビだから自主規制か?でも艶っぽい。
雰囲気だけであの色香がにじみ出るなんて!
日本のエンタテインメントでごっそりと抜け落ちてる要素。
少しは見習ってほしいものです。

 

 

 

5.似ている登場人物たち


ツイン・ピークスのツインには「双子」という意味もあります。
数多くの登場人物には、まるで双子のように似ている人たちがいます。

ウィル検察官とピート
レオとハンク
ドナとオードリー
ログ・レディとネイディーンと後半の悪い人
ローラとマデリーン
クーパーと唐沢寿明
キャサリン加賀まりこ
ハンクと岸谷五朗
ジャコビー先生と大林宣彦
ジェリー・ホーンとゴードン・コールとデイヴィッド・リンチ
後半のジョシーと和田アキ子

などなど。
みなさん、混乱しないように気を付けましょう。

 

 


6.明滅


ツイン・ピークスの"ピーク"には「先端」や「頂点」などの意味があります。
ふたつの先端。表の顔と裏の顔。明るさの頂点、暗さの頂点、つまり明滅。

電灯の激しいオン/オフ、雷、看板のネオン管、パトランプ、懐中電灯、カメラのフラッシュ etc...

ドラマ内で画面が明滅する時、大変重大な事態が起こります。
作品の最後に必ず入るクレジット「LYNCH / FROST PRODUCTIONS」が明滅してるところから、これらは意図的に仕掛けられているものです。
見逃さないようにしっかりと目を見開いて、しかし部屋は明るくしてテレビから離れて見てね。

なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるのが世の情け。
TWIN PEAKS WALK WITH YOU


 

 

 

 

 

Twin Peaks (TV Soundtrack)

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『沈黙 ―サイレンス―』隠れキリシタンではなくウォーリーを探せ

窪塚洋介

わたしはこの人の顔が大好きで、ずっと見ていたいと思うのです。

なぜか魅入られてしまうのです。

街 〜運命の交差点〜』のAD役のころから、というのは嘘ですが『天国に一番近い男』というドラマで見かけてからずっとファンであります。

男性は窪塚。

女性は駅乃みちかナタリー・ポートマン

先日、「『ジャッキー』を観に行くぞ!」との決心も大雨を理由に自宅でゴロゴロするという楽なほうに転んでしまいましたが、ずっと心の中では『ジャッキー』を見に行きたい気持ちを今も持っています。

 

自身の名前もそうですが、作品時間もいつも長いなと思わされるマーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙 ―サイレンス―』。

今回は別段長く感じなかったのは窪塚洋介のせいでしょうか。

周囲の観た人は結構残酷なところで目を覆ってしまった、という意見もありますが、わたしは塚本晋也さんの水攻めでは、心の中で大爆笑していました。

不謹慎でした。お詫びします。お釈迦様、ごめんなさい。

まるでキリストの磔のようになる死後には「おぉ!」って思ったので許してください。

 

塚本さんの磔がキリストの磔に似せてるのは、どちらかといえば直喩的な表現ですが、この映画には暗喩的な表現もあります。

ラスト、棄教し江戸に移住したロドリゴのもとにキチジローがやってきて告解を求めます。「もう神父ではない」と初めは断るロドリゴですが、結局キチジローに赦しを与えるシーン。ロドリゴの背後に十字架がありました。

言葉でうまく説明できないので簡単な絵をご覧ください。鑑賞したのが節分の頃なので記憶が曖昧な箇所が多分にあります。それも絵で表現しています。

 

 

f:id:cathexis-impish:20170413225219p:plain

 

壁の何でもないところに紐が垂れ下がっていて、それが十字架のように見えます。

バストショットのサイズなので、背後に目がいかないよう普通ならば邪魔になる紐は映さないようにするのではないかと思うのです。

ロドリゴの言葉とは裏腹に密かに十字架を画面に入れ、心境を表す。

この直後、ロドリゴがキチジローに赦しを与えるシーン、カメラは二人をとらえていますが、背後は障子です。障子の格子、十字架で満たされています。日本が舞台なので障子や牢屋の格子はたくさん出現しますが、ここの格子はストーリーからいっても特別で、十字架を暗喩していると思うのです。

(イラストを描くのに四苦八苦したので、ここのショットの絵は断念します。わたしは楽なほうに転びます。)

 

こういうメタファーは、昔の映画でいうと『ダーティハリー』が有名ですね。

『沈黙』のように十字架と思わせるものがいろんな場面で出現しています。

 

やっとラストになって十字架の暗喩に気が付きました。

スコセッシ監督のことですから、映画前半にもこのように隠れたものがたくさん散りばめられているかもしれませんね。あなたはウォーリーを見つけましたか?

ウォーリーを探すために、すぐにもう一度観ようとは思いませんが、いつの日か。

まずは『ジャッキー』を。

 

 

 この本に『ダーティハリー』のことの記述がありました。

映画の授業―映画美学校の教室から

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『ラ・ラ・ランド』The way we are

デイミアン・チャゼルの前作はあまり好感が持てなかったのですが、今作は楽しめました。過去のミュージカル映画のエッセンスをふんだんに詰め込まれていました。

そして物語はバーブラ・ストライサンドロバート・レッドフォード主演の『追憶』という映画を追憶させられました。

 

ラ・ラ・ランド』はそうでもないですが、『追憶』のような長い年月の男女を描いた作品に私は大変弱く、すぐにホロリとさせられてしまいます。

カサブランカ』『恋人たちの予感』『秋津温泉』などなど。

一番は『ビフォア・サンライズ』の鑑賞から9年経って観る『ビフォア・サンセット』でしょうか。

9年間という時間の長さと90分という短さが同時に押し寄せてきてグチャグチャにされる快感にひたれます。

 

閑話休題

観た人がいろいろ話題にしているラストの夢?妄想?ですが、

セブのでもミアのでもなく、われわれ観客が夢見る理想のふたりの人生、「観客のラ・ラ・ランド」だと私は考えます。

 

しかし「観客のラ・ラ・ランド」が果たしてふたりにとって幸せなのか?

自身の店を持つ夢を諦めミアをサポートする人生。

自身の夢は叶ったけど、自分のために夢を犠牲にした人が一番近くにいる人生。

 

The way we are, 今のふたりのあるがままの姿を見ろ。

ミアのセブが視線を交わすお互いの表情が幸せそうだと捉えるのか、不幸せだと捉えるのか。

観客の歩んできた人生によって作品に対する評価が決まるのではないでしょうか。

賛否両論なのも納得がいきます。

映画のショットと観客の人生のモンタージュ。

こういうクレショフ効果、いい映画に多いですね。

 

 

今のアメリカ映画はわざと難しい移動撮影でワンカット長回しを撮るということが流行りのようですね。

ひと昔前のやたらとカットを割ってた頃と比べると格段に見やすくて良し。

トランスフォーマー』は目眩がしたので途中で退場しましたからね。極端な例ですけど。

 

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